full moon in the blue heaven
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漫画みたいな夏がやってくる
「ねぇーYちゃん」
「どした?」
個別指導塾でのバイトが終わって、教室内でだらだらしながら高校時代の同級生Yちゃんに声をかけると、くるっと振り向いて返事をしてくれた。
「今日ひさしぶりにT氏を見かけてね」
「ほう」

「ていうか私目悪くて手ふられてるのに気づかなくてさ、無視しちゃった」
「うわーT氏傷心じゃん」


バイトより少し前、この日の放課後のことである。
友達二人と、「月曜の会をやりましょう」という話になった。月曜の会とは月曜日の放課後に学校近くの大戸屋に寄って、ご飯やデザートを食べる会である。前会計のその店でレジに並んでいるときに、カウンター席の端でご飯をかきこむ男の子がこちらの方角に手をふった。
推定距離は五メートル。雑然としたレジの周りの誰かにふったのだろうと解釈し、私は無視してメニューに向かった。


「でね、あとからカバンに見覚えがあるなって思ってよく見たらTだったのよ」
「学校ならともかくそんな公衆の面前で恥かかすなんて、かわいそうな」
「そんなにひどくない、ない。で、お茶とりにいくついでに声をかけた」


彼はちょうど立ち上がって帰ろうとするところだった。腕をたたいて振り向かせた。
「ねぇ!さっきごめん、手ふってくれてたでしょ?」
「あぁ、あいかわらず目悪いんだねー」
「ますます悪くなったかも」
二ヶ月ぶりの再会である。

「なぁ、お前の弟の話」
彼はいきなり唐突な話をはじめた。
「なに?」
けげんそうな顔をした私にたたみかける。
「え、弟の彼女、知ってる?」
「は?うちの弟に彼女がいるの!?」
青天のへきれきである。

「彼女だって?知らないよ?なんの話!?」
聞き返す私に彼はにやっと笑って、
「ま、いいや、べつに。じゃあな」
立ち去ろうとする。
「ちょっとまってよ!なんでそんな中途半端な話すんのよ!」
「大丈夫、聞けばわかるから。じゃあな」
行ってしまった。


「そんなわけでね。うちの弟とTの妹が同じクラスなんだけど、それにしてもなんでそんなこと知ってるっていうか大体何の話だったんだっていうか……」
いぶかる私にYちゃんがこたえた。
「あー兄弟どうしもおんなじクラスらしいねー。この前あいつ言ってたよ」
「は?いつ?」
「なんか部活で集まったとき。けっこう言いふらしてるみたいね」

はぁ、である。
そもそも私だって、彼から聞かなきゃ弟のクラスの面子なんて知らなかったのだ。どうして自宅住まいで毎日顔をつきあわせて一緒に勉強している私より一人暮らしの彼のほうが、弟の事情に詳しいんだ。そしてなぜそんなどうでもいいことを言いふらすんだ。

「だいたいさぁ!あいつなんかに彼女ができるだなんて!」
姉は時たま嫉妬する。
「まあまあ。弟くんも、今何歳?」
「十七かなぁ」
「セブンティーンだなんてさ!いいじゃん、青春するくらい!許してやんな!」
Yちゃんの笑顔は底抜けだ。

「まぁ、そんなのはどうでもいいんだよ。一番こわいのはねぇ……」
私は一番おそれていることをぶつけてみる。
「うん」
「『お前の弟とうちの妹付き合ってるんだよ』って言われたらどうしようかと思って……」
Yちゃんの顔が真顔になった。
「うん……まぁ、ありうる、よね」
そうか、やっぱりあり得るのか。
いやだなぁ。
どうしよう……。


家に帰ってから階段を飛び上がって弟の部屋を覗き込んだ。
「ねぇ、質問があるんだけど」
彼は椅子をくるっと回して耳からイヤホンを抜いた。
「ん?」

「あんたの彼女ってだれ」
「は?」
彼は不敵な笑みをこぼした。
「っていうか、今つきあってるだけだよ」
なんという言い訳だろう。
「彼女ってだれ」

にやにやしながら彼は私にその名を告げた。
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コメント
電車の中で読んだの失敗だったよー(笑)あたしとは関係ないところで起こってる話なのに、にやけるよ(笑)
| ほりん | 2008/05/28 8:34 AM |
>>ほりん

まったくわけのわからん話だよ!
私とも関係ないところだけどさー勝手にしろって感じだけどさー……
うーむ……
| mippo | 2008/05/28 11:13 PM |
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